本日引け後に、ソフトバンクグループの四半期決算が発表されました。
純利益は3兆円を超えましたが、前の記事でもご説明しましたように、ソフトバンクグループにとってP/Lはさほど役にたたないため、詳細は割愛します。
NAV、つまり一株あたりの純資産価値(ネットアセットバリュー)は2021年1月1日時点で12,705円と減少していますが、アリババの株価の下落がきつかったことが影響しているでしょう。
それよりもビジョンファンドの順調さが感じれれ、これは投資家の考えを変え、株価を「まずは」NAV水準まで押し上げるドライバーになりうる決算であったという印象です。
孫さんが言っていましたが、AI企業への投資プロセスにおける経験値が上昇している旨をいっており、今後、一層期待できそうです。
市場を不安にさせていた上場株式への大規模投資ですが、この決算時点では1000億円程度のマイナス、現在はプラス1000億程度だそうです。そして投資趣旨は、AI企業に投資する間に資金を寝かせておくのももったいないという趣旨の発言があり、やはり本命のユニコーンAI企業への投資が第一であり、GAFAなどの上場企業への投資は「つなぎ」であろうことが読み取れました。
今後、ソフトバンクグループはAIユニコーン企業への投資を引き続き続行し、NAVが拡大してくだろう、そう感じられました。
なお孫さんの考えとして、FRBなどの金融政策に合わせて投資する行動こそが投機であり、AI企業の構造的成長への投資こそが投資であり、そしてそれへの自信をみせていました。共感できる考えであり、ソフトバンクグループに対する強気姿勢は変わりません。
ところで今日の決算説明会では、ヤフーBB時代(ADSL)は、、、のような話も出ていましたが、やはりあの時はよほどきつかったのでしょう。振り返ってみれば、爆発的な赤字計上に対し、販促費がなければ、これだけよかった、EBITDA、つまり減価償却がなければ、これだけ素晴らしいという、なかなかの発想で市場を「口説き」、エクイティファイナンスをしていた時代に対し、今や、自己資金があまり、AI企業に膨大に投資できる状態、それが現在であり、ソフトバンクグループの将来への自身がみなぎっている決算説明会だったかと思います。
さて大事なのは株価が上がるかですが、しばらくは、上昇ドライバーはこれです。AI革命、ソフトバンクグループに疑心暗鬼だった機関投資家が、最近の雰囲気をみて、投資行動をポジティブに変えてくること。私たちが変わらずとも、ソフトバンクグループが変わらずとも、彼らの変化が株価上昇をもたらすと考えます。
最後の蛇足ですが、アリババ(アント)に対する規制についての発言もありました。孫さんとしては独占禁止法、金融規制から、肯定的な見方であると感じました。私も同意見であり、アントはさすがにIT企業の名のもと、特に金融規制から逃れすぎだったと思います。金融において、ブラックスワンは排除しなければなりません。アントの高すぎるレバレッジ状態は、リーマンショックを招いたモノライン、そしてファニーメイなどの政府系金融住宅公社の過剰レバレッジを彷彿とさせます。リーマンショックはレバレッジ順に発火していきました。あの連鎖は今でも忘れません。いくら金融工学でリスクを分散しようと、リスク自体は絶対的に存在します。過剰レバレッジは、ブラックスワンの温床であり、アントの件は、グローバルに理解できる水準の規制かと思っています(上場直前でいきなり言い出したのはここでは置いときましょう)。そしてここから感じたのは、こういった規制もあり、ソフトバンクグループのGAFAへの投資姿勢も、政府規制がちらつき、考えがやはり未上場AIユニコーンへより向かいだしただろうということです。一つの時代の成熟化と、新たな始まりを感じます。
Comments are closed